How Google Works 戦略と戦術

シリコンバレーのコーチとして有名なビル・キャンベル(Bill Campbell)さんのことを知りたくて、この書を購入しました。内容はビル・キャンベルのコーチングについては、少し触れている程度で、メインはGoogleの戦略と戦術でした。想定外の内容でしたが、現代において組織が発展するための戦略と戦術が満載で、非常に勉強になりました。

How Google Works 私たちの働き方とマネジメント

エリック・シュミット、ジョナサン・ローゼンバーグ、アラン・イーグル、ラリー・ペイジの共著です。2014年の初版ですが、2020年においてもとても新鮮です。最後の部分に書いてある通り、あらゆるビジネスパーソンに役立つ内容に仕上がっています。

内容は、企業文化、戦略、人材、意思決定、コミュニケーション、イノベーションに分かれています。特に、前半3つは日本のITとは関係のない企業・組織にとっても含蓄の深い内容です。基本となる考え方は、世界最高の商品を作るには、優秀な人材(エンジニア、スマート・クリエイティブ*)をかき集めて、彼らの邪魔にならないように、マネジメントすること、に集約されます。

スマート・クリエイティブ:自らの専門分野に関する深い知識を持ち、それを知性、ビジネス感覚や様々なクリエイティブな資質と組み合わせる人物。

企業文化

企業の最も重視する価値観を示します。会社の事業と価値観が一致する人材は吸い寄せられ、一致しない人は寄ってきません。Googleの価値観は「長期的目標に集中する」「エンドユーザーの役に立つ」「邪悪にならない」「世界をより良い場所にする」といった考え方であり、繰り返し構成員に伝え、報奨によって強化しています。

興味深い内容の一つに、狭いオフィスに詰め込むような環境でスマート・クリエイティブに働いてもらいます。スマート・クリエイティブはお互いの交流の中で真価を発揮します。ただ、静かな場所に移動する自由も充実されるべきで、googleのオフィスにはカフェの隅、ミニキッチン、小さな会議室、屋外のテラスなどたくさんの「隠れ家」が準備されているそうです。新しいアイデアは、クリエイティブな仲間との会話の中で生まれやすいのは誰もが実感していると思います。異なる専門分野間での会話は「組み合わせ型イノベーション」につながります。なるほどと思いました。

リーダーの心構えにもコメントがあります。自分のアイデアが最も優れたものではないとわかったときには、他の人間の邪魔をしないように身を引くこと。能力主義の一環でもあり、ほとんどのスマート・クリエイティブは何事にも意見を持っており、彼らの意見は正しいときは、正しく評価され、大きな権限を与えられていると感じられる環境を作り出します。

戦略

時代の変化のスピードが速い現代社会においては、「事業計画を立てる」こと自体は問題ありませんが、「事業計画を忠実に実行する」ことは、大きな欠陥を含むとされます。最も重要な戦略は”優れた人材の確保”であり、優れた人材が集まったチームは、計画の欠陥に気づき、軌道修正することができます。

googleの場合は、基本方針のみを構成員全員に示しました。「革新的な技術的アイデアに賭ける」「利益ではなく規模を最適化する」「最高のプロダクトによって市場自体を拡大させる」。スケールが大きいですが、スケールが大きいことを目的としているので、この方針が息づいているとも言えます。

大切なのは顧客の要望に応えることより、顧客が思いつかないような、あるいは解決できないと思っていた問題への解決法を提供することと断言しています。目の前の顧客の要望よりもはるか先を見て(想像して)、最高のプロダクトを開発します。人それぞれいろいろな仕事があると思いますが、将来起こりうる可能性のある時代を想像しながら、最高のものを作り上げる発想・姿勢が重要です。

ライバル企業の動向へのこだわりは、凡庸さへの悪循環と断定します。「同じようなことをしている他社を負かすだけでは、仕事として面白くない。まだ誰の頭にも思いついていない、本当に必要なモノを思いつくことが面白い」。自分に置き換えてみると、数年先ではなく、5年、10年先に起こるかもしれない時代を想像して新しいプロダクトを生み出すような仕事もしたいです。リスクが伴う(利益につながらない)可能性を理解する必要もありますが。

人材

googleが人材を集めるのに、非常に大きな努力を続けていることがわかります。現在あるものを作るのは、誰にでもできますが、未来に必要となるものを想像して、開発することはとびきり優秀なスマート・クリエイティブが必要だからです。経営者の仕事の中で、一番重要な仕事は「採用」と断言しています。経営者は「自分よりも優秀な人材を採用すべき」とよく言われますが、これはなかなか難しい場合もあり、googleでは、採用プロセスをわかりやすくし、委員会(合議)で実施しています。誰を昇進させるかも委員会で決めます。

Googleの採用のおきてがあります。
①自分より優秀で博識な人物
②プロダクトと企業文化に付加価値を与える人物
③仕事を成し遂げる人物
④熱意があり、自発的で、情熱的な人物
⑤周囲に刺激を与え、協力できる人物
⑥成長しそうな人物
⑦多才で、ユニークな興味や才能を持っている人物
⑧倫理観があり、素直な意思を伝える人物
⑨妥協は不要。解雇するのは辛い仕事です
優秀な人材が集まりやすいgoogleならではの「おきて」ですが、なるべくそうありたいという条件は世界共通と考えました。このような人物を採用することができたなら、次はその人物が能力を発揮しやすい環境作りで、上記の企業文化の育成と戦略の出番となります。

追加など

上記3項目の後に、別の3項目(意思決定、コミュニケーション、イノベーション)が続きますが、私自身は日本で仕事をしており、IT企業勤務でもありませんので、参考になった3ポイントだけ取り上げさせていただきます。

ビル・ゲイツからの言葉「収益の八割を稼ぐ事業に八割の時間をかけよ」。革命的な興味の尽きない開発を追いかける姿勢は重要ですが、コアビジネスに集中し、愛情を注ぐことが最重要です。確かに忘れてはいけないポイントです。

安心して真実を語れる環境を作ります。良い知らせは次の日もあまり変わりませんが、悪い知らせは日を追うごとに更に悪くなっていきます。人間は「悪い知らせを報告する役回りは避けたい」という欲求があります。辛い真実を報告しやすい環境作りが大切です。

「ユーザーに焦点を絞れば、あとは全部ついてくる」。ユーザー重視を見失わなければ、開発も、利益も、長期的には必ずついてきます。どのような業種にも言える真実ではないでしょうか。ただ、短期的にはそうではないかもしれませんが。

まとめです

どのような企業・組織であっても
①目指すべき「文化」を育成し、全構成員に行きわたらせます。
②優秀な人材を集め、能力を発揮しやすい環境を作ります。
どのような立場のビジネスパーソンの方でも、上記のどこかは参考になるのではないでしょうか。

2017年には文庫本で出版され、990円で購入できました。お得感が半端ないです!