「人蕩し(ひとたらし)術」 無能唱元著

臨済宗のお坊さん無能唱元さんの著書(2005年、日本経営合理化協会、9800円)です。400ページという厚い本ではありますが、実例を挙げながら、わかりやすく解説してくれています。ひとたらし、というと何となく悪いイメージがあるかもしれませんが、どうすれば「人間としての魅力」が付くかという点を解説しています。

人間としての魅力は、リラックスした、心の余裕が重要と始めています。全体に渡って、人間的魅力に溢れた「若かりし豊臣秀吉」と「ホンダの本田宗一郎さん」のエピソードが紹介されています。

人蕩の極意

「魅は、与によって生じ、求によって滅す」、これこそが人蕩の極意と明言します。シンプルな例では、金離れが良い人は好かれ、ケチな人は嫌われます。お金や物質的なものに限らず、人間の本能に関する衝動の有形・無形の関わらずあらゆるものにおいて、与える人は魅力が増し、求めてしまう人は魅力が減る、ということです。

本能的衝動として挙げているのが、①生存本能、②群居衝動(群れたい)、③自己重要感、④性欲、⑤好奇心、です。物に限らず、有形、無形のどんなものでも相手の欲するものを与えることで人間の魅力が増えます。

明るく、快活であれば、相手を楽しい気持ちにさせます。これも相手にプラスの影響を与えていますので、自分の魅力アップにつながります。逆に優秀な人材であっても、陰鬱としていると、周囲にマイナスの影響を与えますので、魅力は激減します。

自己重要感

本能的衝動の中で、それを高めるための努力があまり実践されていない概念が、自己重要感です。自己重要感とは、自分がこの世の中にとって重要だと感じることで、デール・カーネギーの「人を動かす」にもこの重要性が強調されています。

他人をけなしたり、自慢をしている人は、常に自分の中に消し難い自己劣等感の意識を抱いています。相手をけなすことにより、自分の優越性を感じ、自己重要性を感じます。相手に自分の自慢話をして、自己重要性を認識したがります。このことによって、自分の自己重要感は一時的に満たされますが、相手は嫌な思いをして自分に対する魅力は激減します。

ごく一握りの成功者は、まず自分の力で自己重要感を充足し、ついで、他人の自己重要感を満たして上げることに惜しみなく力を与えた人と言えます。

自己重要感を自己充足させる方法として
①自己の才能を表現し、世間にそれを認めてもらう
②他人のために役立つこと
③自己暗示をかける
の3つの方法が紹介されています。①と②は、多くの人が自覚している方法ではないでしょうか。少なくとも、自己重要感の重要性を自覚している人は、実践しようとはしていると思います。でも、なるほどと膝を叩いたのは、③です。自己暗示で、自己重要感が満たされて、他人の自己重要感に気配りができればそれに越したことはありません。

自己暗示の方法

著者はいくつかの方法を挙げていますが、私が実践してみようと思ったのは、以下の瞑想です。

①静かな部屋、できれば夜に、ロウソクをつけて、香を焚くなどして心を落ち着かせます。背筋を伸ばして、かつリラックスします。②両手を上に向けて両膝の上に置き、ロウソクの火を見つめて、深呼吸を十回します。吸うときは普通に、吐くときはゆっくりと長く「ひとーつ」「ふたーつ」と数えながら。③目を静かに閉じて、ロウソクの残像を眺め続けます。このときは何を考えても良いです。④約5分経ったら、もう一度目を開けて、ロウソクの炎をじっと見つめます。そして、ふっと目を閉じ、その炎の中に自分の意識がすっと入っていった、と思います。⑤ファーっと、光とともに全身の意識が拡大して、無重力状態で浮かんでいると想像します。⑥ここで、心の中で自分自身を高めるための言葉(数種類)を三回以上唱えます。

自分自身を高める言葉は、例として「私は立派な経営者になる」「私は大金持ちになる」「私は優れた人間である」などが挙げられていますが、人それぞれで良いようです。

まとめますと

「人生楽しく、生きたいですね。そのためには、いくつかを気にかけるだけで随分楽しくなれますよ」、と言われているようです。著者は2011年に永眠されています。陰鬱な不平屋であることはやめて、明るく陽明な人間になれそうな気分です(少しずつですが)。まずは、今晩から瞑想を実践してみます。