アルコールとHDL(善玉コレステロール)の関係

動脈硬化が進行すると、血管内に血の塊ができて、虚血性心疾患、脳梗塞などのさまざまな病態になります。この動脈硬化は血液中の脂肪の一種であるコレステロール値が多くなることによって促通されます。コレステロールには善玉(HDL)と悪玉(LDL)があり、バランスが崩れて悪玉が増えると動脈硬化が起こりやすくなります。

横断的研究では

日本酒(アルコール摂取)はHDLを増やすことが明らかとなっています。アルコール摂取量と善玉コレステロール(HDL)の関係についての研究は、2017年に東京慈恵医大のグループによって実施された人間ドックの130万人のデーター解析があります(和田ら, 総合健診 2017;44:671-676)。その中で、男性においては摂取アルコール量とHDLの値の正の相関の関係が示されています。

アルコールの1日摂取量とHDLコレステロールの値(平均 ± SD)

経時的研究では

中国の成人70000人以上を6年間にわたり、アルコール摂取量と善玉コレステロール(HDL)の値を観察した研究があります(Huangら, Am J Clin Nutr 2017;105:905-912)。全体としてHDLは年々低下しますが、その低下の程度が中等量飲酒群(1日アルコール摂取量が15-30g)が一番緩徐でした。つまり、少量飲酒の方がHDLは維持されたことを示しています。

Never, アルコール摂取無; Past, 過去に摂取有; Light, 15 g/day以下; Moderate, 15-30 g/day; Heavy, 30 g/day以上(男性の場合)

論文になるまでのbias

論文の内容が「普遍的な真実である」かどうかを判断するに当たって、論文が出版されるまでのbiasを理解することが重要です。即ち、インパクトがあると、論文として発表されやすいという事実があります。例えば、「HDLの値が寿命に関係する」という論文と、「HDLの値が寿命に関係ない」とする論文では、前者のほうが読者へのインパクトは大きいです。つまり、これまでの定説とはちょっとだけ異なり、受け入れがたいほど異なるわけではないような内容が論文として、出版されやすいというbiasは常に付きまといます。「HDLとアルコール摂取量が関係ない」とするデータは論文になりにくいという現状があります。逆に関係があるとする論文を解釈するにあたっては、このようなbiasを含めていろいろなことに配慮する必要があります。

一例としては、認知機能障害とアルコール摂取量が、正の相関がある、負の相関がある、相関はない、とする3通りの報告がありますが、正の相関があるとする論文の数が一番多いです。これは正の相関があった方が論文になりやすいからなのかもしれませんし、正の相関があることが真実だからなのかもしれません。もしかすると、人種もしくはアルコールの種類によって、傾向が変わるのかもしれません。HDLとアルコール摂取量の関係では、正の相関の報告はありますが、負の報告はありません。そうなると最終的には正の相関が正しい、と私は想定しています。