酒米の精米処理

精米は細長い玄米から球状になるように削っていくのが一般的です。大七酒造(福島県二本松市)のように、米の形に沿って精米する扁平精米という方法もあります。酒造りにおける雑味の原因となるたんぱく質などは、米粒の表面に近いほど多く存在しますので、表面全体を削ると雑味の少ない日本酒ができます。精米歩合は、「精米後の重量 / 玄米時の重量 ×100」で表現され、吟醸酒は60%以下、大吟醸酒は50%以下が基準となります。

精米の歴史

一般的に精米すればするほど香りが高くなり、雑味のない綺麗な味わいのお酒になると言われています。

酒造りに「精米した白米」を使うことは、平安時代中期の「延喜式」に記載があります。この中で、朝廷における酒造り方法が紹介されており、日殿という精米所とそこで精米に従事する4人の女官のことが記載されています。その時代は、表面を削る程度で精米歩合は90%以上だったと思われます(「日本の酒」坂口謹一郎、2007)。

1700年以降に桜正宗の初代山邑太左衛門氏が、精米に時間をかけて精米歩合70%前後のお酒を造り、色の薄いスッキリしたお酒が完成し、江戸で大評判になりました。その頃から、精米歩合が70-80%のお酒が主流となりました。

精米歩合とは、お米を磨く(=精米する)割合を表す言葉です。例えば「精米歩合60%」の意味は、玄米の内側60%を残し、外側40%を削り落としたということです。一方で、「精米歩合」とよく似た「精白率」という言葉があります。これは精米歩合と逆の意味合いです。
精米歩合60% = お酒の原料となる残ったお米が60%
精白率60% = 削って糠(ぬか)にした分が60%(お酒の原料に40%が残ります)

酒造好適米

酒造りに適したお米は酒造好適米と呼ばれ、削りやすくするため粒が大きくなるように品種改良されてきました。米の中心の白くて不透明な部分「心白」はでんぷん質が多く含まれ、組織の隙間が多い部分です。この隙間のために、酒造好適米は炊いて食べるとパサつきを感じますが、酒造りでは麹菌の菌糸が入り込みやすく、繁殖がしやすいメリットがあります。

酒造好適米の条件には
① 精米中に砕けにくいこと
② 米粒が大きいこと
③ 「心白」の形と大きさ、位置が程よいこと
④ 外硬内軟であること

食用に美味しいお米はアミロースが少なく、アミロペクチンが多いため、適度に粘り気があり、柔らかく炊き上がります。酒米はパサパサして、硬くそのまま食べると美味しくありません。

精米と米の成分

下図のように、精米の歩合が低くなるとたんぱく質や灰分(かいぶん;ミネラル)の比率が低くなります。ミネラルには雑味を増やす鉄などもありますが、カルシウム、マグネシウムなど、発酵に必要な成分も含まれます。つまり、精米歩合を減らすことは、雑味のもとになる成分を減らすと同時に、酵母の活動を困難にします。精米歩合が低くなると酒造りが難しくなります。

上原浩氏の言葉に「大半の酒造家は精米歩合30%台まで精米した米を生かし切る技量を備えていない」とあります。精米歩合が低ければ、美味しいというわけではなく、適度な歩合が良いようです。過ぎたるは及ばざるがごとしですね。

精米歩合と米の成分変化の関係(吉澤淑、1974)

精米歩合が60%以上の純米酒と、60%以下の吟醸酒の成分の比較表を下に示します。精米歩合が高い分、通常の純米酒の方がアミノ酸の量が多いです。

吟醸酒と純米酒の比較(吉澤淑、2004)

日本酒を熟成させるといわゆる古酒ができます。熟成させている間にアミノ酸と糖が結合するアミノカルボニル反応を起こして、色合いも黄金色や琥珀色(ときにルビー色)になります。熟成して美味しくなるのは元々成分にアミノ酸を多く含む精米歩合の高い純米酒が最適で、吟醸酒のようなアミノ酸が少ないお酒は熟成しても古酒の色合いは期待できません。