絶滅危惧種 キリン を学ぶ

キリン大好き!
キリンの骨標本

宮崎市にあるフェニックス自然動物園には、キリンが3頭います。この3頭はキリンの中でもマサイキリンで、日本には現在8頭しかいないのです(2020年9月3日に7頭になりました・・・)。こんな貴重なキリンがこんなに身近に存在するなんて、と驚きました!

キリンという動物

日本国内には、2011年の調査でキリンは147頭存在し、アメリカに続く世界2位の飼育数です。地球上には2016年のキリンの個体数は約9万頭で、野生のキリンはサハラ砂漠より南のアフリカの国立公園のみに生息しています。1980年代には15万頭以上のキリンが生息していたことを考慮すると4割以上も減少しており、2016年にはIUCN(International Union for Conservation of Nature、国際自然保護連合)により絶滅危惧種に指定されました。

絶滅危惧種とは「現在の状態をもたらした圧迫要因が引き続き作用するならば、その存続は困難なもの」とされています。野生のキリンは日本には存在しませんが、なんとか保護する方法がないのかとぼんやりと考えますが、良いアイデアは思い浮かびません・・・。

4つの集団 ~遺伝的特徴~

DNAの特徴から、キリンは「アミメキリン」「マサイキリン」「ミナミキリン」「キタキリン」と4つに分類されます。日本の動物園で飼育されているのは、多くがアミメキリンで、少数のみがマサイキリンです。

外見の模様にそれぞれ特徴があり、ある程度は鑑別ができます。

「キリン解剖学」著者の郡司芽久氏によると「アミメキリンとされている一部には「アミメキリン」と「キタキリン」を交配させた個体が存在する」とのことです。

アミメキリン(大分県のアフリカンサファリ)とマサイキリン(宮崎市フェニックス自然動物園)の模様です。

アミメキリンの特徴は、明るいクリーム色のラインできれいに区切られた模様で、四肢の内側にも模様があります。キタキリンは四肢の内側には模様がありません。アミメキリンの中で四肢の内側に模様がない個体がいたら、それは交配した個体の子孫なのかもしれないそうです。キリンの観察が楽しくなる情報です!

一方でマサイキリンの模様はギザギザで不規則な模様となります。赤道以南から、タンザニア中央部にかけて分布します。遊牧の民として有名なマサイ族が多い地域である「マサイランド」と重なっていることからマサイキリンと呼ばれています。

宮崎市フェニックス自然動物園のマサイキリンです。模様が不規則です。

第一胸椎の可動性

キリンのことを学びたくて、「キリン解剖記」(郡司芽久著、ナツメ社、1200円税抜き)を購入しました。

「キリン解剖学」のメインテーマは、第一胸椎の可動性についてです。頚椎の数に関しては、哺乳類のほとんどは、7個で構成されます。第7頚椎につながっている部分が、第1胸椎です。

キリンは高いところの食べ物を食べるために、長い首を持っているとされます。同時に地面の水を飲む必要もあります。この両者を効率よく両立するには、7個の頚椎という制約(?)の中で首の可動性が他の動物よりも大きい必要があります。

キリン科の生き物であるオカピとの比較で著者の研究は進みます。オカピの第一胸椎は肋骨との関連により可動域が制限されますが、キリンの肋骨はオカピとは異なる連結により可動域制限が緩和されます。その事実を両者の赤ちゃんの遺体でCTを撮影し、証明しています。赤ちゃんを利用したのは、(成体では大き過ぎるために)赤ちゃんでないと人間用のCTでは撮影できないからです。

郡司氏は、子供のころから、キリンが大好きでキリンの研究者となりました。解剖学の指導者は存在しましたが、キリンの専門家は日本には不在で独力でいろいろなことを切り開いたエピソードが記載されています。疑問に感じたことを一歩一歩解明していく内容に感銘しました。

キリン保全財団の活動

Giraffe Conservation Foundationは、国際動物保護団体として、アフリカ全土にわたり、政府や大学機関、ローカル団体や国内外の保全団体とともに、キリンの保全管理やその支援を行っています。ナミビアにベースを置く慈善団体は2009年にジュリアンとステファニー・フェネシー夫妻によって設立されました。

現在でも、東アフリカのアミメキリンとマサイキリンは厳しい状況に直面しています。キリンの個体数を減らす要因には、剥製、骨、尻尾、そして食料としての密漁、人工的なフェンス、人口増加や気候変動による生息地域の縮小が挙げられます。

二ジュールでは、貴重な野生動物資源という認識が広まり、政府による保護プログラムが2011年に策定されました。観光業やGCFの活動により、ナイジェリアキリンの生息数を増やしています(1996年 49頭、2016年 400頭、2020年 600頭)。

参考文献

郡司芽久. キリン解剖記. ナツメ社 2019
Giraffe Conservation FoundationのHP
ナショナルジオグラフィック 2019年10月,78-101

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