キリンの首が長い理由 ~生存競争に勝つため~

キリンの魅力は何といっても「長い首」です。長い首の先には、注目されることが少ない愛嬌豊かな表情がありますが、長い首のインパクトは半端ありません。体重は550-1500kg程度ですが、身長は3.5-4.5m、首の長さは2mにも及びます。長い理由は、「高いところにある木の葉を食べることができるキリンが生き残った」というダーウィンの「進化論」が有名ですが、それ以外にもいろいろと説があるようです。

高い位置の若葉を食べる

仮説の一つ目は、高いところの餌を食べることが生き延びるために必要だったという要素です。ダーウィンは、首が長い個体が生存競争に勝ち残り、短い個体は子孫を残す確率が低くなるために、世代を経るごとに首の長いキリンになったという説です。ついでに舌も長いです。ただ、これには異論があり、100万年前からキリンは既に他の動物よりも圧倒的に首の位置が高く、生存競争には大きくは影響しなかったのではないかと推測されています。

別の考え方では、常に高い位置の餌を食べるために首を伸ばす動作が、長期的に長い首になったという説があります。バレーボールの選手の身長は高いですが、代々バレーボールの選手だとしたら身長が高くなるのでは?、という考えです。これにも異論があり、アフリカのサバンナ地方では、冬の食べ物が少ない時期に、高い位置にある葉っぱよりも、肩の位置にある葉を探し回るというデータがあります。

性の選択と差別化

オスは一般的に背比べにより優劣を決定しますが、優位性を争うためにオス同士が首をぶつけ合う(ネッキング)ことがあります。子供を産めるメスをめぐって戦うときは、かなり激しい戦いになります。戦いに勝ったオスは、メスと交尾する確率が高くなり、子孫を残す可能性が高くなります。そういう理由で、野生においては、戦いに勝てない体格の小さな若いオスは、おおよそ8歳までは交尾する機会がないとされます。

長くて強い首が、この戦いに勝つために有効な武器になります。長くて強い首を持ったキリンが子孫を残すという説です。

オスの頭蓋骨は10kg近くになるのもかかわらず、メスは3.5kg程度にしかなりません。このネッキングの勝負に勝つことが生き残りに有利になるというこの説が最近では有力となっています。

体温調節と気候変動

長い首の中には、血管が通っています。血液の温度は体温を直接変化させます(大きな影響を持ちます)。細くて長い首を血液が流れることは、体温調節に便利な可能性があります。キリンの特殊な模様は体温調節に関連すると考える学者もいます。

体温調節には、気候変動の影響もあります。現在はアフリカの乾燥地帯に主に分布していますが、中新世後期(800万年前)には湿潤な地域(ヨーロッパ、アジア)から、アフリカに移住したと言われています。湿潤な地域では首は短かったようですが、アフリカの乾燥地帯で首が伸びた可能性が示唆されています。乾燥地帯では草や葉っぱは少なく、低い部分の食べ物はすぐになくなるからです。

湿潤から乾燥への気候変動が、熱帯の植物から開けた土地における乾燥地帯の高い位置の食べ物を食べることになったことも関係しそうです。

視界と捕食者からの警戒

後ろ脚が強く、これによって捕食者の頭蓋骨を砕く威力があるとは言われていますが、基本的には身を守る手段を持たないキリンは、いち早く捕食者・敵(ライオン、ヒョウ、ハイエナの群れなど)を発見する必要があります。発見が容易にできるように首が伸びた・首が長い個体が生き延びたという説があります。

視力はとても良く、1kmくらい離れたところにいる仲間も見分けることができるそうです。

自分が生活している環境で、どうすれば効率よく繁栄できるかというために自分を進化させてきた説がほとんどです。おそらく理由は一つではなく、上記の複数+αなのではないかと思っています。進化したキリンは素晴らしいです!

参考
Williams EM. Giraffe stature and neck elongation: vigilance as an evolutionary mechanism. Biology 2016,5,35.
ナショナルジオグラフィック 2019年10月,78-101