オランウータンのハッピー ~絶滅危惧種の危機~

宮崎市フェニックス自然動物園には、一頭のオランウータンがいます。オスのハッピー(1993年生まれ)です。普段はキリンの観察をメインにするのですが、今日はオランウータンに注目しました。訪れると一頭で寂しそうにしていることが多いのですが、今日は冬至(本当は12月21日)の行事ということで、好物のカボチャをプレゼントします。

冬至のプレゼント

プレゼントの食べ物が檻の前に置かれると、普段おとなしいハッピーがそわそわと動き出し、タイヤで遊びます(理由はわかりませんが)。

本日のプレゼントです

まずは、カボチャです。数日前に生のカボチャを渡したら、硬くて食べにくかった様子ということで、少し茹でたということでした。美味しそうに食べていました。

リンゴ、ニンジン、樹の葉など、いろいろ喜んで食べます。あまり好きでない食べ物は後で食べるらしく、少しかじった後で檻の内側に落としていました。

オランウータンの生態

スマトラ島(インドネシア)とボルネオ島(インドネシアとマレーシア)にのみ生息します。オランウータン1種Pongo pygmaeus から構成され、亜種 ボルネオオランウータンP. p. pygmaeus と スマトラオランウータンP. p. abelii の2亜種があります。

食性は雑食で、主にイチジク属・ドリアン・パンノキ・マンゴスチン・ライチ・ランブータンなどの果実を食べますが植物の芽、葉、樹皮、昆虫、鳥類の卵、小型哺乳類なども食べます。人間と同じく雑食です。甘いものばかりを食べると虫歯になるので、キャベツ、樹の葉など、甘味の少ないものをメインにしているようです。

黒い手に黒い指。強そうです!

樹や棒に軽々と捕まる手は強靭です。握力は300-500kgもあるそうです。顔は正面から見るとエラがはっているように大きく見えます。オス同士は戦いに勝つと顔が大きくなります。負けても小さくはならないとのことでした。

オランウータンに迫る危機

オランウータンの生息地は、スマトラ島とボルネオ島で、これらの島々はインドネシアとマレーシアに属します。インドネシアは2億9千万人、人口密度 147.8人/km2、マレーシアは3千万人で、96.0人/km2と、日本(1億3千万人、347人/km2)よりは人口密度は少ないですが、人口の増加率、産業の発展速度がとても高い国です。

人口の増大、住宅地の開拓、気候の温暖化現象による熱帯林の破壊は甚大で、2000年の時点でオランウータンの生息地は元の面積の80%が失われたと推測されています。オランウータンの密輸が跡を絶たないこともあり、生息数はこの100年で80%も減ったとされています。

キリンの個体数の激減と同様にオランウータンにも絶滅の危機が迫っています。

一人親の子育て

雄は雌よりも広い行動範囲を持ち、時おり大きな叫び声を上げます。雌は10歳程度で成熟し、3~6年に一度、1頭の子どもを生みます。妊娠期間は約9ヵ月。寿命は35年ぐらいと考えられています。

オランウータンは、樹上生活をする霊長類の中では最大の種で、類人猿では例外的に家族や社会生活を営まない単独生活者です。子育ては母親が単独で行います。子どもは3歳ぐらいで離乳、7~10歳で独立します。アザラシやクマも、母親が単独で子育てをしますが、オランウータンは単身で平均8年もの年月にわたり子供の教育をします。

母親は、その子供にとって唯一の師匠としていろいろなことを教育します。子育ての重要な目的は、食べ物の確保と安全の確保です。子供には数多くの樹木の中からどれが食べ物として適しているか、その樹木はどこに存在するかを教育します。

ヒトと同じように母子で遊びの時間もあります。この遊びは絆を強めると同時に、社交性と身体能力向上に貢献します。

日本のオランウータン繁殖事情

1991年から宮崎市フェニックス自然動物園では「サクラ(メス)」(1989年生まれ)が飼育されていました。「天才!志村どうぶつ園」のトレーナーを務めた宮沢厚さんが一緒にテレビなどで活躍した有名なオランウータンです。ハッピーは1998年にお婿さん候補として宮崎に来てくれました。それを機にサクラはショーを引退し、繁殖に努めます。しかしながら、2009年にサクラが死亡してしまいました。以降は、ハッピー一頭での飼育が続いています。

2017年9月27日(水)、多摩動物公園のボルネオオランウータンのメス「ジプシー」が死亡しました。死亡したときは推定62歳で、4頭の子を残こし、国内で飼育されているボルネオオランウータンの半数がジプシーの血統ということでした。

ハッピーは、ジプシーの子チャッピーの子供で、ジプシーの孫に相当します。そのため、国内のオランウータンのメスは、従妹に相当する個体が多いのです。ジプシーの家系と関連のないメスは、国内ではとても少ないようです。

血縁を濃くしないためには、別の血統のオランウータンが必要です。お嫁さんを探すには、国外からの導入を念頭にしているとのお話でした。

参考
出口智久. 宮崎市の動物園の歩み
BBC earth「動物のスーパー子育て術」