動物園の目的・歴史・展示方法

宮崎市フェニックス自然動物園の年間パスポートを購入してから、ときどき訪れます。何度も同じ動物に会うと、この動物たちは何を考えているのだろうかと考えてしまいます。2020年の年末には、少し足をのばして大分のアフリカンサファリに行ってきました。通常の檻で飼育されている動物園と広めの場所でサファリパークとして飼育している動物園の違いも考えてみました。

動物園の定義

動物園関係の書籍を読むと、多くの書籍で「動物園とはなにか」「動物園の目的はなにか」というテーマが述べられています。改めて、この質問に答えようとすると、簡単ではないことに気づきます。

動物園の歴史家の佐々木時雄さんの見解は、近代動物園の定義として4つの条件を提示しています。以下に私の個人的な解釈を含めて、記載します。

収集の対象が地球的で広範囲:その辺に生息する動物だけを収集しても、近代の動物園としては物足りないです。地球的に収集することにより、世界の果てまで旅行した気分を味わうことができれば来園者の数も増えそうです。

繁殖や長期飼育などの動物の生活権:動物が明らかに不幸せだと観察している側の心が痛みます。

科学と収集の結合:サイエンスと多くの人々との連結も重要です。人類が多くの分野でサイエンスを実践していますが、動物園も単なるデータの集積に留まらず、サイエンスとして動物の調査・研究を実施します。

民衆と収集の結合:多くの人々が動物との接点を持つことにより、希少動物がどうあるべきか、どう保護されるべきかを考えるきっかけになります。動物保護にとって、最大の障壁は無関心と言いますが、その無関心を減少させる効果は絶大です。

樹の上のチンパンジー。平和の象徴のようです。

動物園の目的

動物園の目的・役割については、動物園水族館協会の飼育ハンドブック・HPなどに掲載されています。

教育・環境教育:動物について生態や生きる環境について学びます。自然とは何か、動物とは何かを学ぶことができる場所を提供します。

レクリエーション:ヒトが「命の大切さ」「生きることの美しさ」を感じながら楽しく過ごします。収集した動物の飼育展示を通じて、来園者に知的な娯楽を提供します。

調査・研究:人口増加と環境破壊により、野生動物の生息域が年々縮小しています。動物が快適に過ごすためにはどのような環境が必要かを調査・研究することも含みます。

種の保存・自然保護:地球規模での環境破壊は著しく、野生動物は多くの種が絶滅の危機に瀕しています。絶滅しそうな動物に生息地域外でも生きていける場を与えるような活動も含みます。飼育下での繁殖などを通じて野生個体群における種の保存への還元のための基幹研究施設としての役割が求められています。ただ、このような役割の実施には莫大な資金とマンパワーが必要で、直接的に利益を生み出さない活動にはスポンサーの理解と協力が必要です。民間や地方自治体がスポンサーである日本の動物園にできることは限定的です。

宮崎市フェニックス自然動物園のミミナガヤギ。耳が長い!

動物園の歴史

紀元前 1 千年もの昔から中国の皇帝やエジプト、インドなどの王侯、貴族により、人が野生動物を捕獲し、食用以外の目的で飼育されていました。

17 世紀には多くの動物園(メナージェリーと呼ばれました)が存在しました。当時の動物園には 2 つのタイプがみられました。1 つはライオンやヒョウ、ゾウやサイなどの危険を伴う肉食動物や大型動物を威厳のある石積みの建築物に収容して見せるタイプです。もう1つは庭園の中に、主に草食動物を放し、動物を風景として取り込むタイプです。イギリスでは、シカやヒツジ、ウシなどの動物のいる風景を楽しむ風景式庭園と呼ばれる様式が広く普及しました。

現代の動物園の先駆けと言えるのは、1828年に開設されたロンドン動物園があります。ロンドン動物学協会が設立した施設で、「動物学の進歩および動物界における新しきものの紹介」を目的としています。動物学研究を行う人たちが会員を募り、その会費をもって飼育場を始めました。入園は会員とその関係者に限定されていましたが、1847年には一般に公開されるようになりました。

日本では、江戸時代に動物の見世物興行の記録があります。京都、江戸、大阪で孔雀、インコ、九官鳥、キジを鑑賞または娯楽として楽しむタイプがあったようです。

最初に本格的な動物園が誕生したのは明治時代のことです。1882年(明治15年)に上野動物園が大日本帝国農商務省博物館付属動物園として開園しました。世界からいろいろな動物を収集したこともあり、比較的収入も大きかったとの記録があります。1892年には動物の病気に即応するために動物園初の専任獣医が誕生しました。1907年にキリンのオス・メスの2頭が上野動物園に来園し、大人気となりました。

大分のアフリカンサファリのサイ。大きい!

動物園の動物の収集は、主に欧米の動物園からの購入でしたが、ワシントン条約などの影響で動物の輸入に制限が生じるに従って、国内での繁殖に力が入ってきています。ただ、オランウータンマサイキリンのように繁殖の技術は確立されても、国内生息数が既に少なすぎて繁殖が困難になっている例もあります。

動物園の展示方法

展示方法を考えるときに考慮すべきことには、動物の飼育環境、職員の労働環境、コスト、来園者が理解しやすいこと、が挙げられます。直接触れ合うことができる動物は、直接触れ合うスペースを作ることが多いです。それ以外の動物の場合は、従来の檻を立てる方法(檻型)と動物が十分動ける広い施設を来園者が車で移動する方法(サファリ型)に大きく分類できます。

宮崎市フェニックス自然動物園は、メインは従来型です。ライオン、トラは広くはない檻の中で生活しています。キリンやシマウマなどの草食動物はゆったりとしたスペースに放牧され、来園者は少し高い位置から動物を鑑賞できます。

檻はありますが、この距離感(2m以内)はたまりません。

大分のアフリカンサファリは、いくつかの動物ごとに2重の扉で区切り車で移動して比較的広いエリアでゆったりしている動物を車の中から鑑賞します。それぞれの動物は、その特性を考慮したうえで組み合わせが検討されています。

チーターはシマウマと一緒に飼育されています。望遠レンズで撮影しました。

飼育環境はサファリ型の方が広いスペースを動くことができるために動物は嬉しいと考えられます。ただ、手入れする場所が広いためにコストは高くなります。来園者の理解に関しては、どちらが良いかは一概には判定しにくいです。それぞれの場所とコストを考えながら、展示方法を決めていくとしか言いようがないと思いました。

若い飼育員さんの意見を取り入れながら、有意義な発展を期待したいです。

参考図書
石田戢. 日本の動物園. 2010年