お酒と手足のしびれ ~アルコール性末梢神経障害~

新型コロナウイルスの影響で、家飲みが増えた方が多いと思います。お酒を長期間にわたって、大量に飲むと、足先(ときに手先にも)びりびりというしびれ・痛みを生じることがあります。呑兵衛の人で、足先がビリビリして痛いと言っている人がいたら、それはアルコールのせいかもしれません。

アルコール大量飲酒による「しびれ」のことをアルコール性末梢神経障害といいます。アルコール依存症の患者さんの数割に発症すると報告され、アルコール性末梢神経障害を呈する方はとても多いです。

原因は

原因については、どこまでが純粋なアルコール性末梢神経障害といえるかは若干の疑問を示唆する研究もあるようです。即ち、アルコールそのものによる毒性が第一に挙げられますが、それ以外の要素も関係することが多いということです。アルコール依存症に関連する栄養欠乏の一つであるビタミンB群欠乏症、アルコールの分解産物であるアセトアルデヒド(acetaldehyde)による影響も強く関連します。アルコールに関連する末梢神経障害は多因子と言えます。

お酒は料理と一緒にいただくと、ビタミン不足にはなりにくいです。写真は、イタリア料理店「リソトランテ・レガーメ」の料理。

具体的な症状は

多くは足先の異常感覚(ビリビリというしびれ感が多い)もしくは疼痛で始まり徐々に悪化します。時には、アルコール大量摂取時に急激に悪化することもあるようです。この感覚異常は夜間の訴えが多く睡眠を妨げることが多いですが、進行すると1日を通じて感じられるようになり、物に触れたときに強い疼痛(燃えるような感覚、burning feet)を生じるようになります。一般的には、左右対称性の感覚障害がみられ、進行すると手先にも症状が広がります。

自律神経障害としては、足先の皮膚発赤・萎縮、発汗過多または無汗、時に起立性低血圧、排尿の障害も認めます。アルコール依存症患者さんには高血圧症が多いですが、この機序として自律神経系障害の関連が疑われています。

糖尿病と低栄養

アルコール依存症の方は、高血圧以外に糖尿病、低栄養を呈することが多いです。これらの要素がどう末梢神経障害に関連するかは、多因子が絡むということもあり、多くは解明されていないようです。

アルコール依存症患者さんにおいては、糖尿病を合併している場合の方がより重篤な末梢神経障害を呈することはわかっています。一方で、低栄養に関してはビタミンB1欠乏症の研究以外はなされていませんが、BMI(Body mass index; 体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))が低値を示すような低栄養状態が、末梢神経障害の増悪因子となるとする研究もあります。喫煙は末梢神経の血流を低下されますので、末梢神経が回復する力を低下させます。

ドバイの街並み。コロナ後に旅行できる日が待ち遠しいです。

治療および予後

治療は断酒およびバランスのとれた食事摂取が理想ですが、実際には容易ではありません。断酒と同様に、種々のビタミン補給と十分なカロリー補給は必要です。異常感覚、疼痛に対しては、抗てんかん薬、抗うつ薬、カプサイシンクリーム(唐辛子の成分)などが症状緩和に使用されますが、難治性のことが多いです。

予後については、末梢神経障害が軽度から中等度の末梢神経障害の患者に断酒およびバランスのとれた栄養摂取が可能であった場合には、数年後には非常にゆっくりとほぼ完全に回復することが期待できます。神経障害の程度が強くなるほど回復が困難となりますが、障害の程度が重度であっても、肝機能障害や糖尿病の存在がなければ断酒と栄養摂取により回復する可能性があるとされています。喫煙している方は、禁煙しないと改善する可能性は下がります。

アルコール摂取量が多い人で、足先がしびれている人は、アルコール性末梢神経障害の可能性があります。断酒を強くお勧めします!ビール好きの方には、アルコールフリービールである「龍馬 1865」もお勧めです。

参考文献
Koike H. Alcoholic neuropathy. Curr Opin Neurol. 2006; 19: 481-6.
白倉克之, 丸山勝也編集. アルコール医療入門. 東京: 新興医学出版社; 2001, p.55-57.
Gane E. Resolution of alcoholic neuropathy following liver transplantation. Liver Transpl. 2004; 10: 1545-8.