キリンの歯の配列(歯並び)~ウシ、ウマ、ヒトとの比較~

キリン大好き!

宮崎県立博物館で「丑」年にちなんで、ウシの特集が組まれていました。その中で宮崎大学獣医学部の協力でウシの骨格標本の展示がありました。キリンの骨格標本を先日観察したばかりですので、非常に興味をそそられました。

キリンとウシの歯の配列は同じ!

キリンの歯の配列は、ウシ科、シカ科と同じ形式です。しかしながら、下前歯は円弧の形で、直線様のウシ科と楕円様のラクダ科の中間の形をしています。

キリンとウシの骨標本です。ともに上顎の前歯はありません。

上前歯に切歯がないことにより、葉っぱを巻き取るために舌が出入りすることがより容易になり、枝から葉を引っ張ることもより容易になります。上前歯に弾力性を持たせることにより、枝部分が抜けて、葉っぱが引っかかるということです。ヒトとキリンの歯の配列を下図に示しました。

上側が上顎、下側が下顎の歯の配列です

歯は、一般的に、切歯(incisors; I)、犬歯(canine; C)、前臼歯(premolars; P)、後臼歯(molars; M)の4種類に分類されます。ヒトとキリンでは、その配列は大きく異なります。

ヒトは I 2/2(上/下) C 1/1 P 2/2 M 2~3/2~3 と表現され、本数は 28~32本 です。
キリンは I 0/3 C 0/1 P 3/3 M 3/3 の 32本 です。

ウマの歯の配列は

キリンと似ているウマはウマ科に属します。ウマには、上下に切歯があります!

左右それぞれに、上側には切歯2本、犬歯1本、狼歯1本、臼歯 6本、下側には切歯1本、犬歯1本、臼歯6本の合計42本あります(狼歯はないときもあり。メスには犬歯がなし)。

オス I 3/3 C 1/1 P 3~4/3 M 3/3 の 40~42本
メス I 3/3 C 0/0 P 3~4/3 M 3/3 の 36~38本
Pの3~4というのは、狼歯のことです。生えている個体と生えていない個体が存在します。

ウマの骨格です。上前に切歯が確認できます。

キリンとウシは同じ歯の配列ですが、ウマは異なります。その理由は、生物の分類により説明できそうです。

生物の分類上は下記のようになります。
キリン:鯨偶蹄目、キリン科、キリン属
ウシ:鯨偶蹄目、ウシ科、ウシ属
ウマ:ウマ目、ウマ科、ウマ属
キリンとウシは同じ鯨偶蹄目ですが、ウマはウマ目で「目」の段階で異なります。”キリン”にとって、”ウマ”は”ウシ”よりも遠い存在になります。

同じ鯨偶蹄目のクジラの歯は、20~30本ある上の歯は基本的に顎に埋没していますが、下の歯は40~50本生えています。クジラは、クジラ目だった時代(クジラ目と偶蹄目が分かれていた時代)もあり、同じ鯨偶蹄目とはいえ若干異なるようです。

乳歯と永久歯

キリンの乳歯は6本の下の切歯、2本の下の犬歯、12本の大臼歯からなります。乳歯は6歳までに永久歯に生え変わりますが、このパターンにより、年齢を推測することができます。

出生直後は歯はありません。4週間すると、乳歯の犬歯は出かかっている状態で、それ以外の乳歯は生えそろいます。1歳のころ、全ての乳歯が生えそろい、第一後臼歯が出てきます。2歳には、第二後臼歯が出てきます。3歳半ころに、第三後臼歯が出てきます。4歳ころに乳歯の第一切歯が永久歯に生え変わります。5歳に第二切歯が永久歯に生え変わり、3本の前臼歯が生えてきます。5歳半に犬歯を除く全ての永久歯が出そろいます。6歳には犬歯が出現し、6歳半には全ての永久歯が完成形になります。

6歳以降の年齢については、粗くしか推測できませんが、歯の長さや表面の削れ具合によって推測できます。ただし、食べ物の成分によって葉の状態はかなり変化するとされています。

8歳のコユメと4か月のコナツ。コナツには何本の歯があるのかと推測してしまいます(2020年12月5日撮影)。

参考文献

Dagg AI. Giraffe. Biology, behaviour and conservation. 2014

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