映画「グリーンブック」2018年アメリカ ~伝説の黒人ピアニストとイタリア系白人の友情~

映画から学ぶ

グリーンブック(green book)とは、1950-1960年代の黒人差別の激しかったアメリカ南部を、黒人が旅するために作られた施設ガイドのことです。この映画は1962年の話で実話を基にした映画です。

ニューヨークの高級クラブの用心棒

1962年、ニューヨークの高級クラブで用心棒を務めるトニー・リップ(イタリア系アメリカ人)は、クラブの改装が終わるまでの間、黒人ピアニストのドクター・シャーリー(ジャマイカ系アメリカ人)の運転手として働くことになります。シャーリーは人種差別が根強く残る南部への演奏ツアーを計画していて、二人は黒人用旅行ガイド「グリーンブック」を頼りに旅立ちます。出自も性格も違う彼らは衝突を繰り返しますが、小さなトラブルを乗り越えながらお互いの立場を理解し合います。

出生も、価値観も、立場も、まったく異なる二人ですが、お互いがお互いの立場を少しずつ理解し、理解した上で相手の生き方にアドバイスを送ります。そのアドバイスには拘りがあっても偏見はなく、お互いの相手の得意分野に敬意を払い、後半の佳境に入ってからは相手への思いやりの感情も混じってきます。

価値観の全く異なる男同士の友情が築かれるステップを丁寧に描いた感動の名作です。

原作はトニー・リップの息子も関与

プロ野球選手のジャッキーロビンソンが初めて白人がメインの大リーグでプレイしたのは1947年で、入団していたドジャーズ以外の全ての15球団がロビンソンがリーグでプレイすることに反対しました。黒人差別が著しい時代が続きました。それから15年も経過しており、黒人差別もそれほどではない時代と想像していました。しかしながら、地域によってはまだまだ根強い差別が残っているようです。

本作は、シャーリーとヴァレロンガに対するインタビューや、劇中にも登場したヴァレロンガの妻宛ての手紙に基づき、監督のファレルや、トニー・リップの息子であるニック・ヴァレロンガによって製作されました。イタリア系の発想のためか、テーマは黒人差別と深刻でヘビーですが、描き方は明るく、実際にこの映画は「伝記コメディ映画」に分類されています。

ロケ地は、ほとんどが南部のルイジアナ州です。黒人の比率は32%程度で、アメリカ全体の黒人の比率は13.1%なので、黒人の比率が多い土地です。

白人社会では、有色人種は偏見を持たれることがあります。日本人も同じように偏見を持たれることがあります。自分という人格とは別の問題で差別をされる状況がとても悲しく感じるシーンが複数含まれます。

幻想即興曲

南部の黒人の溢れる庶民的なバーで、シャーリーがショパンの幻想即興曲を引きます。雰囲気は全く場違いであっても、素晴らしい演奏に、皆が盛り上がります。クラッシックも、ジャズも、音楽と演奏が素晴らしければ、雰囲気とマッチするかどうかは、二の次ということがわかりました。

音楽の力は素晴らしいですね。