感謝を期待しない ~デール・カーネギーの言葉から~

デール・カーネギー「道は開ける」の中に、幸福を見つける方法の一つに「感謝を期待しない」という記載があります。何かを他人にしたことに対して、相手から感謝されることを期待していたら、かえって非難された経験はないでしょうか。そこまではなくても、感謝の言葉がないとイライラしたことはありますでしょうか。

イエス様は

イエス・キリストはらい病の患者10人を癒しましたが、感謝の意を表明したのはその中の一人だけでした(ルカによる福音書)。昔から、絶望的な病を癒してもらうような恩恵であっても、感謝するのはその1割程度だったのかもしれません。そうすると、感謝を期待すれば、大半の場合は裏切られます。そうだとすれば感謝を期待しない方が心の幸福・安定には良さそうです。

感謝の念 と 怒りの感情

相手のためにお金を何度も貸して、施して、たまに徴収を迫ったときに殺された、というようなニュースを度々耳にします。お金を貸した”10″の恩恵は相手の心には”1″程度の感謝の念となり、徴収されるときの怒りは”3″とした場合は、感謝の念の”1″の3倍の怒りなので、殺人に至った、と説明されるとなんとなく納得できました。

マキアヴェッリの言葉

マキアヴェッリの有名な言葉に「人は与えられた恩恵はすぐに忘れるが、以前の怨念を忘れることはない」とあります。受けた恩恵は1/10も心に残りませんが、憎しみはいつまでも残ります。心の幸せのためには、何かを与えることにより自分自身の内面の喜びを見出すことが重要らしいです。

中国古典 菜根譚 

中国の古典「菜根譚」にも、類似の趣旨の戒めがあります。

「誰かに者をあげようとするときは、自分の利益やその報酬を要求する気持ちを持った時、その価値はなくなる」(前集52、ひじき意訳)と。期待すると、自分のことさえも裏切るということのようです。

実践は容易ではないのかもしれませんが、とりあえず「相手からの感謝を期待しない」ことから始めてみます。

参考
デール・カーネギー. 道は開ける. 創元社 1999年
塩野七生. マキアヴェッリ語録. 新潮文庫 1992年
今井宇三郎訳. 菜根譚. 岩波文庫 1975年