ドイツの児童文学「モモ」時間を盗む人、盗まれた人
「モモ」(Momo)は、ドイツ人作家ミヒャエル・エンデ(Michael Ende, 1929-1995年)による児童文学作品です。1973年に発行され、1974年にドイツ児童文学賞を受賞しました。各国で翻訳され、累計発行部数は350万とされています。特に日本では根強い人気があり、日本での発行部数は本国ドイツに次ぐようです。
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あらすじ
物語は、「円形劇場に住むモモと友だちの平穏な生活」から「時間泥棒・灰色の男たちの出現」そして「マイスター・ホラとの出会い、時間の花」と進行します。
円形劇場はローマをイメージさせますが、明記はされていません。古い小さな町の円形劇場にモモが住み着きます。モモには両親はおらず、一人で劇場跡地に住みますが、町の住人の協力で大きな不便はなく過ごします。”町の人々は話を真剣に聞いてくれるモモ”を大切にします。
そんなときに、「灰色の男たち=時間泥棒」が大人の時間を盗み、盗まれた人々はアクセクと必要なことだけに集中します。そして人間らしい生き方・楽しい方を忘れてしまいます。
「時間を盗まれた大人たち」の表現のされ方は、まさに忙しい現代人そのものです。浮いた時間を利用して、灰色の男たちが増加します。それに対して時間を配る立場のホラとモモは解決への道のりを模索します。
何を訴えているのか?
作者は何を訴えているのかという点がとても興味深いです。仕事にアクセクと精を出すのは良いが、その目的は何なのかということを良く考えて、と言っているようです。自分なりの目的・目標があって、そのために自分の貴重な時間を費やすという能動的な生き方ならば、それも良いでしょう。でも、お金のため、惰性で、という”人生にとって意味のないこと”が理由で、際限なく自分の時間を使ってしまう姿勢に疑問を投げかけています。
設定は”時間泥棒”が人間としての憩いの時間を盗むということなっていますが、作者は「その時間泥棒は自分自身である」と気づいてほしいとの意図がありそうです。
対象は小学校高学年!
対象は小学校高学年(~中学生)とされています。この本のルビもその辺りを対象にしているために、難しい漢字は使用されていません。そのために、漢字を知っている大人が読むには少し読みにくいです。
読者の小学生は、自分たちの両親や身近な大人を観察して、全員とはいわなくても「時間が盗まている大人」がたくさんいることを発見すると思います。そして、自分の時間は盗まれないように、と考えるでしょう。
小さなころから「人生は有限」で、時間は自分のために使うという発想に気づかせてくれる貴重な本でした。大人の自分もいろいろな点に気づかされました。
子供にプレゼントしたい本の上位にいつもランクインするようですが、確かにその通りの内容でした。でも、本当に衝撃を受ける読者は、時間を自分に盗まれた大人たち(自分を含む)だと思います!
一読して時間を取り戻してはいかがでしょうか?