逆境は人を育てる ~苦境を楽しむ余裕がほしい~

長い人生の中には、まさに逆境という経験を人間は何度も味わうと思います。私自身もここで公にするには憚れる内容ながらも何度かこれは逆境だと感じた経験があります。それらの経験は、今から思うと良い経験で、トータルでは自分の殻をやぶる良い時期だったように思いました。

コルシカ島生まれのナポレオンがフランス皇帝に

誰もがその名前を知っているナポレオンは、1769年にイタリア近くにあるコルシカ島に生まれました。1784年にフランス軍の陸軍士官学校に入学しますが、出生が上級貴族ではないナポレオンには出世の見込みはなかったそうです。尊敬する上司からの裏切りなどのいくつかの挫折があり、「コルシカ島に錦を飾る夢」は破れます。

パリの凱旋門

ナポレオンは、コルシカ島ではなく、フランス全体で何かをしたいと考えます。一方その頃のフランスは、フランス革命で国全体が激動の渦に巻き込まれます。ナポレオンは適格な状況把握能力と作戦・指揮能力で外国勢力を相手に勝利を挙げ続け、皇帝まで上り詰めます。

コルシカ島で錦を飾ることに成功していては、現代まで語り継がれるナポレオンの英雄物語はありませんでした。

戦後最長の在任期間 安部内閣総理大臣

第二次安部内閣は2012年12月26日に発足以降、2020年9月16日まで続きました。この日までで、安倍晋三首相の連続在任日数は戦後最長の2822日となりました。

安部総理大臣は2006年9月に第一次安部内閣を発足させましたが、2007年7月の参議院選挙で大敗し(改選76議席 ⇒ 46議席)、2007年9月に持病の潰瘍性大腸炎が悪化したことを理由に退陣しました。まさに、選挙での大敗と持病の悪化と逆境でした。

そのときの口惜しさを胸に秘めながら、理想の総理大臣像のための準備を重ね、第二次安部政権では長期の政権を確立することができました。

まさに逆境が戦後最長の内閣を作ったといえます。

400年前の中国古典「菜根譚」

「菜根譚」は中国古典の一つで、洪自誠(洪応明)が書いた文章です。16世紀後半から17世紀前半頃に生きた人と考えられていますが、詳しい伝記などは残っていません。

この中の前集99
逆境の中に居れば、周身皆な鍼砭薬石(しんべんやくせき)、節を砥ぎ行いを磨いて覚えず
順境の内に処れば、満前悉く兵刄戈矛(へいじんかぼう)、膏を銷し骨を靡して知らず

意味は
逆境にいるときは、自分の周囲は皆、病気を治す道具である金属の針、石の針、薬、温めた石のように、知らず知らずのうちに、自分を鍛え、精神を養う経験となります。
自分にとって都合の良い環境は、自分にとっては仇となるものばかりで、骨と肉を無茶苦茶にしてしまうものです。しかも、なかなかそのことには気づきません。

逆境は人を育て、快適な環境は人をダメにするという意味です。

現実に置き換えて

今まさに、耐えがたき逆境の最中であると感じている人は、多いのではないでしょうか。そんなときは、自分にとって今は成長するための有意義な期間だと解釈し、ヘソを曲げずに自分の信じた道を歩みたいですね。

そうすれば、ナポレオン、安部政権のような歴史に残る何かができるかもしれません。

そう自分に言い聞かせるときが最近増えているような・・・