絶滅危惧種のウナギを食べる

夏の暑い日には、不思議と鰻(ウナギ)が食べたくなります。宮崎県は、鹿児島、愛知に続き、ウナギの養殖生産量は全国3位の県で、そのためか美味しいウナギ屋さんがたくさんあります。でも、この数年で鰻丼の値段がどんどんと上がってきています。

2014年に国際自然保護連合から、ニホンウナギは絶滅危惧種に掲載されました。そろそろ絶滅に近いのかもと危惧しています。

ウナギは食べていいのか?

川南町の図書館にて「結局、ウナギは食べていいのか問題」(海部健三著)という本を借りました。2019年出版の書籍ですが、ウナギの現状について詳細に記載されています。

メインとなるのは、ウナギの赤ちゃんであるシラスウナギが密漁などにより無制限に採捕され、ウナギの個体数が大きく減っていること、その現状が正確には掌握できていないこと、完全養殖には(現時点では)コストがかかり、シラスウナギ密漁からの養殖の方が低コストであることなどが書かれています。

大きな魚の密漁は大きな船でないとできませんが、シラスウナギの密漁は網されあれば可能で1匹当たりの単価が高いこともあり、多くの人が密漁に参加しているようです。

時期と場所によっては、1匹0.3gのシラスウナギが1000円以上の価格になるようです。10匹で1万円で、一攫千金を目指す記事も多数発信されています。

赤ちゃんウナギ(シラスウナギ)を捕まえないで!

保護が難しい理由

養殖は難しくても保護は容易に取り組める、と思っていました。でも簡単ではないようです。

は、川で生まれ、海で育ち、大きくなって同じ川に戻ってきます。川の産卵環境などを整えると、その川の鮭の個体数が増えます。一方でウナギはマリアナ諸島などで産卵され、日本などの川で育ち、再度海に戻ります。遺伝子の研究からは同じ川に戻る傾向はないとされています[Han et al, 2010]。

即ち、保護に取り組んでも、別の川が乱獲すればトータルで意味がなくなってしまいます。逆にとある川で乱獲しても、別の川で保護してもらえば翌年も乱獲が可能となります。そうなると保護する側のモチベーションがなかなか上がりません。

個体数維持のための放流

国内では2015年からシラスウナギの池入れ量の上限が21.7トンに上限が定められていますが、輸入を合わせてもこの上限の量に到達しておらず規制として意味をなしていないようです。

ウナギの放流というニュースを聞いたことがあります。ただ、放流されるウナギは料理店に卸す優先順位が低かった成長の悪いウナギで、長期的にはウナギの種の保存には悪影響を与える可能性が危惧されています。

「成長期に人工的に餌を与えられて育ったウナギが、生存競争に勝ち残り遠くマリアナ諸島まで到着し産卵できるのか」というと、かなり難しい印象です。実際に、24cmを超えるウナギは環境の変化に弱く、養殖環境から自然環境への変化に耐えられないと推測されています。

3g程度の小さいウナギならば生存競争に勝ち残る可能性が高いことが証明されています(9gのウナギと比較した場合)[Pedersen et al, 2016]。それならば、シラスウナギの密漁を取り締まるほうが効率が良く、優先順位も明らかに高そうです。

絶滅回避のためには

シラスウナギの漁の制限(特に密漁の取り締まり)とウナギが過ごしやすい環境整備しかないようです。更には完全養殖のコストを下げる研究も長期的には良さそうです。

上記の本「結局、ウナギは・・・」を手に取るとき、いろいろと分析するとウナギ食べても大丈夫という結論を期待していました。でも、内容はできるだけ科学的根拠に基づきならば誇張なしに、現段階で推測できることをわかりやすく述べるに留まっています。その上での結論は、ウナギは現状のままでは本当に絶滅してしまう可能性が高いこと、ある閾値を超えると突然絶滅という可能性があること、です。

今まで散々ウナギを食してきた自分が言うのはおこがましいですが、「みんなでウナギという種を守りませんか?」