漫画「10万分の1」宮坂香帆 ~筋萎縮性側索硬化症と若い二人~

知り合いから、近日(2020年11月27日)公開予定の映画「10万分の1」について熱弁される機会がありました。「EXILE」「GENERATIONS」の白濱亜嵐さんと「まだ結婚できない男」にも出演している平祐奈さんがダブル主演を務めます。宮坂香帆の人気コミックを実写映画化した恋愛映画です。原作が存在する映画のときは、予め原作を読んで背景を知るとより映画を深く楽しむことができます。アマゾンで原作の漫画9巻セットを購入しました(古本で2286円)。この映画の公開が近づくにつれて、値段は上昇しているようです・・・。

届いて感じたことは、まさに少女漫画です。少女漫画を読むのは、小学校時代に姉が読んでいた少女漫画を暇にかまけて読んでいたとき以来になります。

高校生が筋萎縮性側索硬化症に

「高校2年生の桜木莉乃は、中学時代からの友人である剣道部の人気者・桐谷蓮に思いを寄せています。2人は付き合うことになりますが、残酷な運命が2人に降りかかります。莉乃は祖母の同じ筋萎縮性側索硬化症(ALS)だったのです。いろいろな苦難が二人を襲いますが、蓮と莉乃は、どんな状況になっても、強く生きていきます。」

高校生が、成人以降に発症するALSになるという設定はやや不自然に思いましたが、家族性の場合は若年で発症することもあります。途中のエピソードで、結婚、子育てについて、苦悩する様子が丁寧に描かれています。自分より若い世代の治療法のない難病についてのエピソードであり、奇跡は起きません。涙なしには読み進めることができませんでした。

ALSとは

診療科は「脳神経内科」になります。日本神経学会のHPから、病気の説明をそのまま引用します。

「筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉が徐々にやせて力がなくなっていく病気です。しかし、筋肉そのものの病気ではなく、筋肉を動かすための脳や脊髄(せきずい)の神経(運動ニューロン)だけが障害をうけます。その結果、脳から「手足を動かせ」という命令が伝わらなくなることにより、力が弱くなり、筋肉がやせていきます。ALSを治す薬はありません。常に進行性で、一度この病気にかかりますと症状が軽くなるということはありません。 体のどの部分の筋肉から始まってもやがては全身の筋肉が侵され、最後は呼吸筋も働かなくなって多くの方は呼吸不全で死亡します。」

病気のことを知れば知るほど、辛い病気であることが理解できます。物理学者のホーキング博士、美容アドバイザーの佐伯チズさん、野球選手のルー・ゲーリックさん、映画「アリスのままで」の監督リチャード・グラツァーさんなど、多くの著名人がこの病気でお亡くなりになっています。稀な病気というわけではないようです。

発症する率は、10万人に5~10人程度ですが、莉乃のような家族性はその一部となり、この題名にあるように「10万分の1」くらいになるようです。

物事の二面性

学生だったころの指導者の一人が、30歳台で心筋梗塞になりました。その方は体重100kgを超える巨漢でしたが、病気をきっけに健康的な生活に心がけ、普通の体格になりました。今でも元気に過ごしています。もしもあの時に心筋梗塞になっていなければ、今頃は別の病気でお亡くなりになっていたかもしれません。

知り合いの女性は、歩くのが不自由な病気になりました。それまでは奥さんのことを振り返る機会が少なかった夫は、奥さんに配慮することが増え、夫婦仲が良くなりました。夫は、「病気によって、かえって楽しい人生になった」とコメントしています。

病気自体は辛くて、悲しいことには間違いありませんが、その中でも何か得られるものがあるのかもしれません。この「10万分の1」では、人の優しさ、人の強さに気づくことができたことなのかもしれない、と思いました。

未来への希望

現在は、ALSに対して病状の進行を止める治療法さえありません。しかしながら将来は、蓮が考えているようにiPS治療などの治療法ができるのではないかと期待されています。

梅毒のような感染症は昔は不治の病でしたが、現在では病気の診断がつけば完治できます。ALSと似た病気である脊髄性筋萎縮症の一部は、この1-2年で病状の進行を大きく遅らせる治療法が発売されています。

ALSの治療法もいつかはわかりませんが、完成する日が必ず来ると思います。治療法が完成した際には、蓮と莉乃の続編を読むことができのではないかと、作者の宮坂香帆さんに期待しております。

最後に、映画はまだ見ていません。宮崎県では公開しておらず、新型コロナウイルスの関係で気軽に県外に行きにくくなったからです。映画を見るのも楽しみです。レンタルになるまで待つことになるかもしれませんが。