「蟹螯(かいごう)」~春秋(日経新聞)より~

新聞からの小ネタです。古代中国の畢卓(ひったく;生没年不詳)という酒飲みが「片手に蟹螯(かいごう)、片手に酒杯を持って酒の池を泳いでいれば、一生を十分に過ごせる」とうそぶいたそうです。呑兵衛の発想ですね。

カニで一番美味しい部位は?

蟹螯(かいごう)とは、カニの爪、はさみの部分を示し、美味しい部位という意味です。李白(中国の詩人; 701年生)の詩の中では金液(不老不死薬)との意味も含まれています。

カニの部位で一番美味しいのは、一般的なイメージでは足ではないでしょうか。生き物をいただくにあたって「美味しい部分は一番良く動く筋肉」と言われており、魚では眼球を動かす筋肉が美味しいと一部の食通は考えています。カニの場合は、爪や足が良く動きます。足の筋肉は長くて食べやすいですが、爪周辺の筋肉は線維が短く食べにくいです。でも足よりも数が少ないので、希少価値はあります。

味は人それぞれの好みがありますので、需要と供給の関係で、同じ質・味ならば量が少ない爪周辺の筋肉の方が重宝されます。

「春秋」とは

日本経済新聞の「春秋」は、朝日新聞の「天声人語」、毎日新聞の「余禄」、読売新聞の「編集手帳」、宮崎日日新聞の「くろしお」に相当するコラムです。

これらのコラムは、文章力をつけるために、受験生はしばしば熟読することを勧められます。新聞社の方の話によれば、その新聞社の中でエース級の人が担当するそうです。短い文章ではあるものの、内容が濃いと感じることが多いです。

文字数が確定された文章で、1~2分で読むことができること、今の話題をときどきユーモアをまじえて記載されていますので、私自身も時々読みます。高校生の娘も、学校の先生に勧められて読んでいます。今回は、娘から面白い話が紹介されているよ、と教えてもらいました。大量の情報の中で「家族の共通の話題」という意味でも重宝しています。

お酒の影響について

アルコールを大量(日本人の場合は、アルコール量で80g/日以上)に、長期間(数年以上)飲むと、脳が萎縮します。特に「お酒を飲むと顔が赤くなる人(フラッシャー)」はその傾向が強く、注意が必要です。

アルコール大量摂取が、認知症に関係すると一般的には考えられていますが、反対意見もあります。アルコール大量摂取によって萎縮するのは、大脳白質(神経線維の部分)であって大脳皮質に存在する脳神経細胞の数は減少しない、という説があります。

アルコール依存症の人は、アルコールだけを摂取して、それ以外の栄養素を摂取しないことが多く、ビタミンB1などが不足してウェルニッケ脳症という記憶障害の病気になることがあります。

片手に蟹螯、片手に酒杯

冒頭で紹介した「片手に蟹螯、片手に酒杯を持って酒の池を泳いでいれば、一生を十分に過ごせる」という心境は、嫌なことがあっても、”粋なつまみ”と”美味しいお酒”が十分にあれば、人生は充分に楽しいよ、という感覚でしょうか。たまにはこんな時があっても良いかなあ、と思った次第です。