注文住宅を建てる ~断熱方法と素材~

宮崎県は降水量が多く、梅雨から夏にかけては、少し油断するとすぐにカビが生えてきます。住宅を建てる際には極力カビの生えないように配慮したいという強い思いがあります。2012年10月に近くの工務店さんで住宅を建築すると決めたときに、最もこだわりたいと思ったのが、断熱方法です。

断熱の目的

暑い夏や寒い冬は、家の中と外では大きく温度が異なりますし、そうありたいものです。宮崎県の冬は大したことがないと考えがちですが、数年住んでみると結構寒く感じるものです。

夏の暑い日に、外の空気が室内に取り込まれ、冷やされるとその空気中の水分の含有可能量は減り、(湿度が100%を超えるために)結露します。

同じく、冬の寒い日に室内の温かい空気が窓枠の冷たい部分に接すると結露します。室内で結露しないように、かつ室内と屋外の温度差を十分に保つ方法が良い断熱方法です。

外断熱と内断熱

外断熱は”建物の外壁の内側(柱の外側)に断熱材を入れて断熱層をつくる工法”で、内断熱は”柱の間に断熱材を入れて、断熱層をつくる工法”です。

外断熱は、建物全体を覆うので気密性が高く施工することが容易です。柱の外側に断熱のボードを貼り付けるイメージですので、厚いボードは重力の関係で採用しにくいという面もあります。そのために厚みのある断熱材は施工が難しいです。

内断熱は、柱の間に埋めるように装着していく、従来の方法です。断熱材の隙間が外断熱よりはできやすいとされます。そのために、その隙間から冷気が侵入し、結露が生じやすいと言われています。

大手ハウスメーカーの場合は、現場での作業量を減らし、品質を一定にすることが重要ということもあり、外断熱を採用することが多いです。小規模の工務店さんは、慣れもあり得意・不得意はあるようです。

WB工法とは

はじめに気になったのは、WB工法です。正式には、通気断熱WB(ダブルブレス)工法です。

屋根の一番上の部分と住宅外壁の一番下の部分の各通気口に、気温の変化で伸縮する形状記憶合金を使用します。外側の断熱材と室内の内壁の間に通気の通気層を作り、外気温が15度以上のときはこの通気層を外気が循環し、15度以下の寒い時期はこの通気層を閉鎖して断熱層として利用するというものです。詳細は、ココに解説してあります。

WB HOUSEのHPを改変

かなり前向きに検討しましたが、約200万円の上乗せとなります。さらには夏は室内と通気層の間に断熱層がないために、夏の外の外気が一度涼しい床下を通過するとはいえ、クーラーの効率が悪くなりると感じました(構造上の印象であり、実体験ではありません)。

値段が高いこともあり、チャレンジする必要性を感じることができず、別の断熱材を検討することになります。

種々の断熱材

断熱材の素材を調べてみると、多くの種類のものがあります。それぞれにメリットとデメリットがあります。代表的なものだけを列記します。

「無機繊維系断熱材」
グラスウール ガラス線維、日本では最もスタンダードで安い。湿気に弱い。
ロックウール 石綿の一種、商業施設で利用。湿気に弱い。

「木質繊維系断熱材」
セルロースファイバー 古紙を再利用、欧米では頻利用。高価(グラスウールの倍)。

「発泡プラスチック系断熱材」
硬質ウレタンフォーム 発泡剤を加えた充填式、透湿性と耐久性に優れる。燃焼時に有毒ガス。
フェノールフォーム フェノール樹脂に発泡剤と硬化剤を加えてボード状に形成。害虫被害に会いやすい。

いろいろとあります。

セルロースファイバーを採用!

相談相手の建築士Uさんに最もカビが生えにくい素材について質問したところ、「セルロースファイバー」という回答でした。セルロースファイバーはアメリカの住宅ではシェアが最も大きく(なんと35%)、防虫効果(ホウ酸を混ぜ込むため)、断熱効果も良く、更には防音効果が素晴らしいということでした。調湿効果がある上に、ホウ酸には強い防カビ効果もあります。

短所もあるようです。まずは、下記の写真のようにセルロースファイバーを充填するために、そのスペースを作ります。そのために準備期間が通常よりも数日かかってしまいます。また、側面に関してはセルロースファイバーの重みのために沈下し、上部に隙間ができるのではないかという心配があります。ただ、これに関しては最近では充填圧を高めることでほとんど圧縮されることはない、とされています。

標準の断熱材よりも プラス70万円 ということでしたが、WB工法仕様に比較して安いこともあり、セルロースファイバーを断熱材に使用するようにお願いしました。

9年の経過観察

断熱剤の良し悪しについては、本来は数十年経ってから、壁をひらいて、実際にカビが生えていないかどうかを確認するべきなのかもしれません。しかしながら、居住9年での感想を記載します。結論は、とても快適です。

壁にはカビは生えたことはありません。ただ、これは無垢スギを床に使用した効果もありそうです。

そして何よりも、断熱効果はかなり良いです。冬の暖かさはそれまで住んでいた賃貸住宅よりも数倍良いです。そして断音効果は本当に素晴らしいです。すぐ隣の道路を走る車の音でさえも、窓を閉めた状態では全く気になりません。

次に自宅を建てることがあったとしても、やはりセルロースファイバーが第一候補に挙がると考えています。