運動と健康と寿命の関係 ~適度な運動が長寿の秘訣~

最近の研究で、独身、単身赴任、配偶者との別れなどの一人暮らしが健康を悪化させ、寿命を短くすることが明らかにされています。ではスポーツの影響はどうなのでしょうか。

激しい運動 ⇒ 実は短命!

かなり以前より、激しい運動をしていた人は、そうでない人よりも寿命が短いとされました(ヒポクラテス)。運動が寿命を延長するのか、短縮するのかについては、賛否両論いろいろあります。

最近の疫学的研究においては、運動が長寿に結びつくとする報告が多いようです。多数の論文をメタ解析した報告(33論文、対象人数 883372名)では、定期的な運動により、心臓疾患を含めた死亡率が30%以上減少することが示されました [Nocon, 2008]。

寿命に関する直接的な研究では、オリンピックに参加したフィンランド人の元持久走競技者(2675名)は、対照群に比較して5.5年長寿だったという報告があります [Kujala, 1998] 。他の競技でも同様の結果がでています。

激しい無酸素運動を続けると将来高血圧になるとされ、更にはスポーツによりヒトに有害な活性酸素が生成されることもわかっていますが、「適度な運動は寿命を延ばす」と結論できそうです。

運動と記憶力

頭の健康に関しては記憶力が重要です。人間の記憶には主に脳の海馬という組織が関与しています。海馬の機能は、有酸素運動により向上し、加齢やストレスにより低下するといわれています。これを筑波大学の研究グループがラットで実際に証明しました [秦, 2020]。

軽い運動をした場合は、脳由来神経栄養因子やインスリン様成長因子1を介して、海馬の神経細胞が活性化し、海馬機能が増強されます。ところが強い運動をした場合はストレスによるnegativeな作用がこの効果を相殺するので、海馬機能の向上にはつながりませんでした。

長寿の秘訣は

結局どうすれば、健康に長生きできるかを今判明している結果から考えますと、ジョギング、ウオーキングなどの有酸素運動を精神的にストレスにならない程度に実施し、運動量は減らしても末永く続け、仮にスポーツをやめた後もライフスタイル(酒、タバコ、塩)には十分に気を使うことが必要といえそうです!

文献
Nocon M, Hiemann T, Müller-Riemenschneider F, et al. Association of physical activity with all-cause and cardiovascular mortality: a systematic review and meta-analysis. Eur J Cardiovasc Prev Rehabil 2008 Jun;15(3):239-46.
Kujala UM, Kaprio J, Sarna S, et al. Relationship of leisure-time physical activity and mortality: the Finnish twin cohort. JAMA: The Journal of the American Medical Association 1998;279(6):440–4.
秦俊陽ら. 運動は海馬機能を変えるのか. Clinical Neuroscience 2020; 38, 760-764