落ち込んだ時に、チャンスが来る! ~遠藤周作さんの言葉~
遠藤周作さんの言葉を集めた「人生には何ひとつ無駄なものはない」鈴木秀子監修(朝日出版社、600円)という本があります。遠藤さんの言葉の中で、それぞれのテーマに沿った言葉を、監修の鈴木秀子さんがまとめたものです。
遠藤周作さんの作品は、「沈黙」「海と毒薬」など数作しか読んでおりませんが、この本を通じて、人生についての多くのエッセイを残していることを知りました。その多くのエッセイの中から、長年の交流のあった鈴木秀子さんが珠玉のテーマに沿って、選択した文章を配列しています。いろいろと抜き出してあり、一見読みにくいようにも感じますが、不思議と一連の流れとして理解することができます。
病気で苦しんだ時間の長い遠藤さんの思い入れの強い言葉の一つが「落ち込んだ時こそ人生の本質に触れるチャンス」です。
「あなたが他人の悪口を言う時は、その人があなたの抑圧しているものを表面に出しているから、苛立ちます。」
自分の中で重視していない事項に関しては、喜び、怒り、哀しみ、楽しさなどの大きな喜怒哀楽の感情は生じません。重視している事項で良いことがあれば、とてもうれしいです。でも心の奥にあえて抑制している事項は、自分にとって重要であることには変わりないようです。
放置しておいても良いようなことでも、他人を非難するとき・苛立ちを感じるときは、自分の中の抑圧された感情を表出している場合もあるということです。その苛立ちを表面に出すときはそのような要素がないかを一度振り返ると、より冷静になれるかもしれません。
「軽いうつ状態のとき 「自分が滅入った状態にあることを認めて、そのうえで何かトクすることがないかを考える」。」
物事にはどんなことにも二面性があります。自分を客観的に眺める余裕があれば、その状況を利用して、何かメリットがないかを考えます。 遠藤さん自身は、陽気なときは本を読んでも頭に入らないが、滅入ったときはしかるべき内容の本を読むと一語一語が身にしみて理解できる、書物に書かれている問題が実感を持って迫ってくると前向きな姿勢になるそうです。もちろん、心に余裕がないときは、医療機関の受診をお勧めします。
「滅入ったときは孤独になりなさい。・・・ 滅入っているときは人生の本質に触れる絶好のチャンスだと思いなさい。」
心が病んでいるときこそ芸術が身にしみるという話ですが、このような考えはこの書を読むまでは私にはありませんでした。落ち込んでいるときに一人で静かなクラシック音楽を聴くと、心が会話するような気分になれます。名画を鑑賞するときは、楽しいときよりは、滅入っている時の方がいろいろと感じることができるようにも思いました。次回、滅入ったときは絵画の鑑賞にトライしてみます。
人生が嫌になっちゃうようなことがあり落ち込んだときは、人生の本質に触れるチャンスが来たな・・・、と喜ぶことにします!
引用(上記の「紫字」部分)
遠藤周作著、鈴木秀子監修. 人生には何ひとつ無駄なものはない. 朝日新聞出版 2005年